<「標準治療」で「そこそこ」をめざしていたのに…>
さて、昨日、私は「そこそこ」をみつけられるといいと書きました。「完治めざして、ふりまわされるのはやめましょう」と。しかし…
ノブコフさんに、コメントをいただいて、あらためて思いました。「標準治療」の存在は、けっこう罪だと…。
ノブコフさんが20数年「標準治療をしてきたのに!」と書いていらっしゃるように、私もこれまで、「アトピーにこんなのいいよ」とさまざまな知人に言われても、「ちゃんと医者かよってるから、大丈夫」と、ふっくんに「標準治療」しかしていませんでした!!
それでも、よくならなかった…どころか、ひどくなった…(と主観的には思っています)。
あーちゃんも「たしかな治療を!」と大学病院をはしごして、「標準治療」に邁進して、「ひどくなった!」と脱ステを選択しています。こうめさんもまた、「標準治療」をうけつづけて最終的に脱ステを選択…。
<アトピービジネスにはしる原因は、アンチ「標準治療」なのか?>
むろん、ノブコフさんと、あーちゃんと、こうめさんと、ふっくんが、標準治療でたちゆかない、正規分布のはしっこのグループだった可能性もあります。しかし、あらためて…
「標準治療」どうなんですか?と、問いたいです…。
「標準治療」にまじめにかよう人たちは、おおくの人が、「ちょっとでもこのつらさをしのげれば…」と思っていらっしゃるでしょう。なのに、なのに、悪化です。
竹原和彦先生は、『アトピービジネス』のなかで、「脱ステ患者=アトピービジネスのえじき」のごとく書いていらっしゃいますが……ぜひぜひ、こうした「標準治療」をまじめにうけていたにもかかわらず悪化した人の追跡調査をしていただきたかったです。アトピービジネスにはまるのは、「標準治療」に背をむけた「ばかな/非科学的な」人ではなく、「標準治療」をまじめにうけつづけていたにもかかわらず、「そこそこ」でとどまれず、悪化したからこそ逃げ出した人たちだとおもいます。それを「もともとのアトピーが悪化した」と片づけるのは、医者としてどうなのか…。
<医者の権威>
もちろん、医者の倫理に訴えるのは、戦略としてどうかとは思いますが…。でも、でも、「医者」の権威は強いことを、お医者さんたちはほんとうに知っているのでしょうか。
まえにaccelerationさんが、「『医者の世間知』って具体的になんですか?」ときいてくださって…そのときに「近所のおばさんでも、いいそうなことを言える」と書きました。しかし、実際には、近所のおばさんに「だいじょうぶよ~」と笑ってもらうのと、医者に「だいじょうぶよ~」と笑ってもらうのとでは、受け手の印象はかなりことなります。
たとえば…ふっくんは、最近、いっしょうけんめい肉を食べています。彼は肉がきらいです。牛乳も好きではありません。が、「先生になんでもたべなさいっていわれたもんね」「たんぱく質とると、皮膚も丈夫になるし、背ものびるんだって」と、一生懸命食べています。毎日、牛乳のかわりにヨーグルトとチーズもたべはじめました。「牛乳はのこさずにのもう」「おやつたべるなら、チーズにしたら?」「お肉はのこさない。食べると大きくなれるよ」そんなことを、親がいつも言ってもききません。でも、おなじことをお医者さんが1回言えば、「そうか~」と6才のこどもでも納得するのです。
白衣をきて診察室にすわっている。ただそれだけで、これだけの威力を発することを、「標準治療」だけを宣伝するお医者さんたちは、考えてくださっているのでしょうか…。
<ステロイドの使用方法は、徹底可能か>
いつも、アトピーをかんがえていると、考えはここにまいもどってしまいます。
「標準治療」、やはり問題かかえすぎですと。
それは、皮膚科医がいうように、「塗りからをきちんと指導できない医師がいるからだ」で片づけられる問題なのでしょうか。
厚労省の統計では、2004年度、日本の医師数は約26万人、そのうち皮膚科医は7780人、小児科医14677人、つまり、アトピーのこどもにステロイドを処方する可能性のある医師は、2万人強、いるわけです。2万人の意志統一って、ほんとうにできるんでしょうか?
20人なら、ステロイドの使い方をきっりち指導できるかもしれません…。でも、2万人…アトピーの患者さんは、個人差も悪化要因も、まちまちなのにです。
さらに言えば、いつかご紹介したアレルギーの大家であらせられるという医師、スライドをつかってステロイド軟膏の使い方をきっちりレクチャーされていましたが、ご自分の患者にすら「この患者さん、ステロイドつかいこなせるんでしょうか? 知的障害ありそうですから」などとおっしゃっているわけです。つまり…。「きっちり指導された/する立場にある」医師ですら、患者の薬の使い方を制御するのは不可能だと自ら告白しているわけです。
なのに、「ステロイドはきっちり使えばこわくない」なんて、どうして宣言できるのか…。
<自分のことを、自分できめる>
もうひとつ…医師が、患者を「自分のいうことをきくべき存在」とみなす態度は、どうなんでしょうか?
いま、ふっくん楽しそうです。毎日私に「かゆい!」とおこり、その私に「じっとしててよ!」と叱られながら、ステロイドをぬられる「アトピー客体」だったふっくんが、ステロイドをやめてから「う~ん、今日はどうしようかな~。ここはきれて痛いから、保湿しようかな。ここは、じくじくだから、マキロンにして、あとは、ぬらない」など、自分で肌の状態をたしかめつつ、自分できめようとしています。その結果がわるければ、ときには私にやつあたりもしますが、「こんどは、あーちゃんおすすめのにがり入り塩ためそうかな~」など、試行錯誤をしています。まさに、「アトピー主体」として自分の皮膚にかかわっています。たしかに、すごく回り道のような気がします。でも、彼がアトピー体質である以上、重要なステップのような気がするのです。
かりに、ステロイドがふっくんに有効であったにしろ、薬に依存的であったこれまでより、ずっと望ましい態度だとおもいます。このさき、ふっくんの肌状態がどうなるにしろ、私はやはり「ステロイドやめてよかった」という気持ちはかわらないと思います。
<患者の「試行錯誤」につきあう>
お医者さんは、もしかしたら、救世主/万能願望をもっていらっしゃる方がおおいのかもしれません。「先生、かゆいです」「ほら、これでなおりますよ」と断言して、患者をてばやく苦境からすくいたい、自分の意見をきけば楽になれると示したい…。でも、そうしたら、患者はいつまでたっても、医師にたよりきり…。
そいいった意味で、しーな先生は、理想的なメッセージをくださったと思います。かたくなに「佐藤健二先生療法」にこだわる私に、
「でも、ちょっとくらいなら保湿もためしてみたらどうですか? 抵抗あるなら、実験のつもりで塗る場所と塗らない場所をつくったり、なにをぬるか、配合をどうするか考えてみたり。この程度のアトピーなら、まだ大丈夫。アトピーは、季節によっても、個々の患者さんによっても、かなり違います。じっくり、なにをすると調子がいいのか、この程度のときにえらんでいくのがいいとおもいますよ」とおっしゃり、ふっくんにも「実験してみたら? もし、すごくひどくなっちゃったら、先生、ちゃんとそのときはみるからね」と言ってくださいました。
患者の疾病に気長につきあいつつも、専門家としていざというときのためにひかえていてくれる…。
理想的な態度だとおもいます。さらに、これはアフターケアに自信がないとでてこない台詞だとも思います。勉強している医師だからこそ、フォロー方法にもストックがあり、患者の試行錯誤につきあえる。しかし、地位や予算の獲得に熱心な医師は勉強するひまがない。だからこそステロイドをつかった「標準治療」で統一することに熱心なのかもしれません。マニュアルの存在は勉強不足をかくせますし、なにかあったときに「マニュアルに従っただけだ!」と責任転嫁もできます。
ちょっと厳しすぎるでしょうか…でも、「標準治療」をおしすすめようとする医師たちの存在は、ジョージ・リッツア『マクドナルド化する社会』(早稲田大学出版部、1999年)を思わせます。
<「マクドナルド化」する医療現場?>
リッツアさんは、マクドナルドの特徴を4つあげています。「効率性」「計算可能性」「予測可能性」「制御」です。
以下、彼の主張をまとめてみます。
【効率性】「マクドナルド化した社会では、人びとが自分の目的を達成するために、最適の手段を追求することはめったにない。むしろ、人びとは、さまざまな社会状況においてすでに発見され制度化された最適手段を利用する」(p.71f.)
*欠点は、非合理性をうむこと
【計算可能性】
「ものごとを数えられること、計算できること、定量化できることが重視される」「過程について重視されるのは(通常高速の)スピードであるが、結果については、生産され客に提供される(通常大量の)商品の数が重視される」(p.106)
*欠点は、量の重要視が、質の低下をうみやすいこと
【予測可能性】
「合理化された社会は規律、秩序、システム化、形式化、ルーティン化、一貫性、組織的な操作といったものを重視する。そうした社会では、人びとはほとんどの場面や時間において何が期待できるかを知りたがる」(p.134)
*欠点は、個々人の知識や知恵が反映されにくいこと。
【制御】
「人間を管理するため、長い年月をかけて技術体系が開発され普及されてきた」(p.165)
*欠点は、個々人の判断より、機械の判断が優先される。
リッツアさんはこのマクドナルド化の図式にそって、医療の現状も考察しています。彼によれば、合理化の結果、「医師はそれぞれのケースに対する自分の医療判断に依拠するかわりに、規則や規定、上司の決定または技術上の指示に従って決定を行う傾向をしだいに強めて」(p.222)おり、患者の側は、「自分が医療の作業ラインに乗せられている商品のように」(p.222)感じさせられるといいます。
知人のひとりが、「こどもを皮膚科につれていったら、3分どころか、15秒診療だったよ。一瞥して、「アトピーか」って一言。あとは、看護師さんに「ステロイドの塗り方説明しながら、ぬってあげて」と声をかけ、パソコンにむかった処方箋書いておわり。私たちをちゃんと人としてみているのかしら!もう、医者かわりたい。でも、どの先生なら、ちゃんとこどもとむきあったくれるのか、わからないよ」と怒っていました。
まさに、リッツアさんの指摘どおりのことがおこっています。そして、この皮膚科医のとっている態度は、まさに「標準治療」にのっとったものです。
「標準治療」は、診療時間が短縮できます。どのくらいの薬剤が処方できて、どのくらいの収益があるか計算も可能になります。ここの患者さんでおもいなやまなくてもルーティンとして診療できます。「標準治療」にそっているから「ただしい」
なおらないのは、指示をまもらないあなたのせい」と患者さんを制御することもできます…。
いや、もちろん「標準治療」を推進される先生方が、「15秒診療」のお医者さんをふやそうとしているわけではないとおもいます。しかし、「標準治療」をうちだすこと自体が、こうした診療を可能にしていることもまた事実です。
そういう意味において、たしかにaccelerationさんがおっしゃるように、皮膚科のステロイドと精神科の向精神薬はにているかもしれません。向精神薬の投与もまた、「診療の合理化」を推進します。
「べてるの家」に登場する浦河赤十字病院のお医者さんたちは、患者さんにぶんぶんふりまわされながら、つきあっています。
それを「応援している」と表現しています(浮ヶ谷幸代『ケアと共同性の人類学ー北海道浦河赤十字病院精神科から地域へ』生活書院、2009年参照)。患者さんを「応援する」。「応援する」ピアを看護師が、応援する。「応援する」看護師を医師が「応援する」。「応援する」医師を、患者さんが「応援する」…。ぐるぐるまわる、ややこやしい、でも個人的な関係がはりめぐらされ、そのなかですったもんだしながら、生きています。今の社会から逆行しています。
しーな先生も、診療時間、2回にわけて20分。電話で30分…。「合理的」とはとうていいえません。でも、もしかしなくても、3年以上かよった「つかちに先生」より、たくさんしゃべっているように思います。
すくなくとも、つかちに先生は、ふっくんの食べ物の好き嫌いをしりませんが、しーな先生はしっています。
「標準治療」の推進は、ステロイドをつかうつかわない以外にも、いろんな問題をふくんでいるようにおもいます。
<脱線〜キューバのカフェ>
そういえば…キューバで、あるカフェに3日つづけていきました。
1日にめに「イタリアンサンド」をたのんで、すごくおいしかったんです。トマトとモッツァレラチーズにスライスした黒いオリーブがたっくさんのっかっていました。つけあわせは、山盛りのフライドポテト…。どうしても食べたくて、2日めにいって同じものをたのむと、チーズがエレメンタールっぽいものにかわっていました。オリーブはサンドウィッチのなかにはなく、つけあわせのレタスとそのうえにのっかたポテトサラダのまわりに、まるごと、ごろんごろんと、ころがっていました。3日目…こんどは、パンの種類がかわっていて、なかみも…とにかく、3日間とも同じだったのは、スライスされたトマトがはさんであるという一点のみ。
衝撃的でした。お店の人にきくと、「だって、つくる人がちがったり、材料の在庫がちがったりするでしょ。そんな同じもの、でないよ」と…。なんだか、きけばあたりまえ…。たしかに私がつくる料理も「おかーさん、同じもの2回でてきたことあるの?」とこどもたちにきかれるくらい、その日の冷蔵庫事情と私の気分に左右されてます…。
でも、お店では「同じもの」を要求する…。すっかり、マクドナルド化されてました…(笑)。
<きのうのふっくん>
クラスに5本指ソックスをはいている子がいて、ふっくん、あこがれています(笑)。
きのう、その5本指ソックスと絹のパジャマがとどきました。パジャマは大満足していました。ひっくんが「いいな~。でも、あれ高いんでしょ」というので、「あ~、言ってなかったっけ。一部不良で1000円ってのがあって、それ買ってみたんだよ。でもね~、あの5本指シルクソックスも、こども用がなかなかなくて、1000円だけど」「うわ~。しんじられん。ぼく、パジャマだけ買って」ともうしておりました(倹約家です(笑))。
ふっくんは、そんなことには無頓着。5本指ソックスも、「これ、指が1本ずつ離れてるし、しもやけにならなそう!」と大満足でした。
だから…写真も、「1000円のパジャマきてとる!」と…(笑)。
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ポーズをきめるのに、日に日に時間がかかっています!(笑) |
今日も、元気でした。今日は「流血した3カ所にマキロン」「かさかさの指に亜鉛華軟膏すくなめの保湿剤」「その他はなし」と自分できめてぬっていました。肌の状態自体は、きのとあまりかわりません…。